第1講 改憲を阻んで憲法の生きる日本を―憲法・安保・沖縄政策論

 2019年3月30日、福祉国家構想研究会は2019連続講座の第1講「改憲を阻んで憲法を生きる日本を――憲法・安保・沖縄政策論」を林野会館で開催しました。40人が参加しました。

 共同代表の渡辺治一橋大学名誉教授が2本の講演を行いました。安倍政権がねらう改憲をめぐる歴史や改憲阻止の展望を解き明かし、安倍政権を退陣に追い込んだ後の野党連合政権がとるべき外交・安全保障政策を提起しました。

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その1 改憲史の中の安倍改憲の位置と改憲阻止の展望

 1本目の講演「改憲しの中の安倍改憲の位置と改憲阻止の展望」では、戦後日本政治史を、保守支配層による改憲の試みと改憲を阻み日本国憲法の実現を目指してきた運動との対抗のありようから振り返っています。そこから、2012年12月に発足した第2次安倍政権のねらいや、安倍改憲の歴史的位置を明らかにしています。

 安倍政権は、戦後保守政治がつくってきた独特の外交・安全保障政策、「小国主義」を完全に解体して軍事大国化を完成することをねらっています。発足当初は、特定秘密保護法、憲法9条解釈の変更による集団的自衛権容認から戦争法制定、国家安全保障会議の設置など立法・解釈改憲をめざしました。

 しかし、運動の側は55年ぶりに共闘を実現し、2016年参院選では野党による選挙共闘が初めておこなわれました。こうした中で、安倍政権は市民と野党の共闘があることを前提に、自衛隊の存在を明文化するという、それまでの改憲史では例外的だった手法をとらざるをえなくなりました。

 「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」をはじめ運動の力で安倍改憲を阻むことは、安倍政権、自公政権を倒して憲法が生きる日本実現の第一歩となります。その具体的な課題は、2本目の講演で触れられます。

その2 憲法の生きる日本をどうつくるか―安保・自衛隊・沖縄―

 安倍改憲を阻んだとしても、沖縄・辺野古への米海兵隊新基地建設や、アベノミクス、原発、消費税といった問題は残ります。また、世論から垣間見える安倍政権への消極的な支持は、安倍政権に代わる政治のあり方(構想と担い手の両方)が示されていないことにも原因があります。2本目の講演「憲法の生きる日本をどうつくるか―安保・沖縄・自衛隊」は、安倍政権がすすめる政治を変えるための政権論、政策論を本格的に検討します。

 政治を変えるためには野党による政権共同が必要です。各野党の理念(終着駅)が異なっていも、安倍政権を終わらせて安倍政治を止めるという点(途中駅)が共通しているならば、そこでの共同はできるし、共同しなければ安倍政治を変えたいという国民の願いには応えられません。民主党鳩山政権の経験を振り返った上で、野党連合政権構想の柱として、①憲法改悪に反対して軍事的対決を強化しない形でアジアと日本の安全を実現すること、②アベノミクスに代わる福祉国家型の経済財政策、③立憲主義・民主主義の回復・強化をあげました。

 本講演で詳細に展開されるのは、野党連合政権がとるべき外交・安全保障政策についてです。第1に、戦後のどの政権でもおこなわなかった、憲法9条にもとづく平和のイニシアチブを特に北東アジアでとることです。朝鮮半島の非核化を促進し、核兵器禁止条約を批准して国連外交を強化し、過去の植民地支配・侵略戦争への謝罪が必要です。

 第2に、安保法制の廃止です。安保法制に関連する日米ガイドライン(2015年4月)や特定秘密保護法、国家安全保障会議なども見直しが必要です。これらは、これまでの外交・安全保障の抜本変更となるので、アメリカや外務省・防衛省・自衛隊からの頑強な抵抗が予想されます。さらに、中国や北朝鮮の軍事的行動など、北東アジアで緊張状態が続く中では国民から支持されません。

 よって安保法制廃止には、その担い手を強くし、廃止に必要な環境作りを併行して行う必要があります。具体的には、野党連合政権にはそれを構成する全ての政党党首が入り、必要があれば沖縄・辺野古新基地建設問題とともに国民に信を問うこと。さらに、北東アジアでの平和のイニシアチブをとって一定のルールをつくることです。

 第3は、沖縄・辺野古新基地を中止し、普天間基地を撤去することです。日米安保体制の根幹に触れ、アメリカとの合意が必要となるので、戦略的課題にならざるを得ません。アメリカによる日本における米軍基地・施設の自由使用を認めている、日米地位協定第2条を改正しなければなりません。

 講演では、憲法が生きる日本の実現にはこれでは足りないとして、日米安保条約の廃棄と自衛隊の縮小・解体を提起しました。野党連合政権の下で安保法制を廃止したとしても、日米安保体制の根幹は残ります。野党連合政権が築くであろう到達点の上に、国民的な合意を経て日米安保と自衛隊をなくす方向性が示されます。

 講演のむすびでは、安倍改憲を阻む共同を市民の力で持続し強くできるかが重要であることが、改めて強調されました。